店舗内装工事の鬼門、B工事他の重要性【コラム】

先日、オンラインショップで人気のアパレル店様の初店舗初出店のお手伝いをさせていただきました。以前に、賃貸事務所（事業用物件）の原状回復について【コラム】でも触れさせていただきましたB工事について、開業時も同様に軽視できない要注意事項になります。

内覧し、申込書を提出し、無事に保証会社の審査も通過した後に貸主様と契約書を締結し、さぁオープンに向けて準備して行こう！という段階になってB工事のリスクが顕在化することがあるため、店舗の賃貸仲介として、重要性を肝に銘じておく必要があると考えます。

【B工事とは】

B工事とは、下記表の施工範囲の工事内容は、オーナー指定の施工業者でテナント負担で施工する内容となっています。理由として、建物全体への影響がある部分は、テナント指定の業者ではなく、建物の安定稼働を主たる役割とするオーナー指定業者が施工する内容となっています。例えば、施工費をできる限り削りたいテナント様の都合で、安価な防水施工を行ったことに起因し、防水加工のムラから階下へ漏水が発生し、水の侵入により電気関係もショートし、他テナント様の営業活動に支障が出ることを事前に防ぐため、オーナー指定業者による施工としております。一方で、厨房の広さや場所などのテナント様が描く内装によって工事費用は変わるため、費用負担はテナント負担となります。

【B工事の問題点】

よく問題になるのが、オーナー指定業者から提示されるB工事の見積額が高額になりがちなことです。オーナー指定業者がスーパーゼネコンの場合、間に入る複数業者の利益が乗る（多重下請け構造）ことから市場価格から乖離した高額になることもあり、トラブルの原因となっております。

また、オーナー様が介在しないで、B工事業者様とテナント様が直接やりとりする場合もあることから、関係性の構造的に高額になりやすい傾向にあります。

【問題点への対策】

B工事対策として、考えられる対応策は下記の通りです。

①内覧時よりB工事業者名を確認しておく。

→前述のように、スーパーゼネコンがB工事業者様の場合、テナント様より内装のイメージを共有させていただき、下記②にしたがってB工事見積の概算額を確認させていただきます。

②契約書を締結する前にB工事見積を確認する。

→テナント様が内覧の際に気に入られた際は、可能な限り契約締結前にB工事の概算額を教えていただけるように調整させていただきます。

③B工事部分が小さくなるように内装を調整する。

→内装の施工方法によって、B工事部分を極力減らすことができます。

→今回は、バックヤードと商品展示スペースの間仕切りが床から天井を仕切るプランでしたが、誘導灯などの防災設備が増設になるため、天井から20cmほど隙間を設ける内容で行政（消防署）と協議し、B工事部分を一切カットすることができました。

→また、区画内の壁塗装も、万が一退去となった場合は、全てB工事にて原状回復工事になるため、薄いボードを貼り、その上に塗装を施工することで、塗り直しの必要が無く、ボードを撤去するだけで原状回復できるように調整させていただきました。

④B工事内容をC工事に組み入れるように交渉。

→前述の通り、多重下請け構造により高額になってしまう場合もあるため、テナント様より直接施工会社と契約することで、安価で施工できるようオーナー様、またはB工事業者様と交渉させていただきます。

⑤オーナー様に介在していただき調整をお願いする。

→前述の通り、可能な限りオーナー様にも打ち合わせに同席頂くことで、円滑に進むように調整させていただきます。

【ご近所付き合いの重要性】

実際に工事が始まり、内装業者（C工事）様より「近隣テナント様より工事音の指摘があり、夜間工事が前提になることから、内装工事費が上がってしまいます…（工賃が1.5倍）」との連絡がありました。

予想通り、下の階の完全予約制のエステからのクレームでした。内装業者様に確認した所、工事前のご挨拶に伺っていない、とのことだったため、早急に近隣の方々へご挨拶に回っていただき、予約が入っていない日中の時間帯などを密にご連絡させていただき、最終的に全て日中の工事で追加費用（夜間工事費用）が発生することなく、無事に終えることが出来ました。

マンションリフォームでも感じましたが、共同住宅や商業施設の場合は、近隣の方々との関係性が如実にスケジュールや費用に反映されます。

今回も多くの学びを得る機会をいただき、大変感謝しております。実直な素晴らしいチームでまたお仕事できる日を心より楽しみにしております。